初期症状は?
自覚症状が無い食道がん
食道がんには、扁平上皮癌(しんぺいじょうひがん)と腺癌(せんがん)の2種類の組織型(細胞レベルでの分類)があります。食道がんの約9割の患者様の組織型が扁平上皮癌であり、初期の状態で早期発見ができれば内視鏡による切除で治療が可能です。
ただし、初期の状態では自覚症状はほとんどなく、進行してから胸の痛みや食事がつかえる感じがするなどといった症状が現れます。そのため、初期状態での早期発見が難しい病気でもあります。
がんが進行すると、手術(全身麻酔下での開胸手術や胸腔鏡手術)や放射線治療、抗がん剤治療などが必要で、身体への負担も大きくなります。食道がんは胃がんや大腸がんよりも再発リスクが高い疾患です。
食道がんの症状と原因
症状
食道にがんが発生することによって、以下のような症状が現れる場合があります。
- 背部痛
- 胸痛
- 体重減少
- 声枯れ
- 食物がつかえるような感覚
- 胸がしみるような感覚
- 咳
食道がんは初期にはほとんど症状が現れませんが、病状が進行していくと体重の減少や食べ物のつかえ感などといった症状が現れ、さらに悪化すると嗄声という声枯れなども起こります。
無症状のうちに胃カメラ検査を行うことで早期発見・治療が可能ですが、症状が出た時には既にかなり進行していることも珍しくないため、定期的な検査が重要です。
原因
食道がんの約90%を占める扁平上皮癌は、アルコールの摂取や喫煙によって発症のリスクが大幅に高まります。タバコに含まれる発がん性物質は複数あり、扁平上皮のがん化の原因となります。
その他、アルコール摂取時に発生するアセトアルデヒドも発がん性物質です。そのため、飲酒と喫煙の両方を嗜む方は、がん発症のリスクが高まります。お酒を飲むとすぐに顔が赤くなってしまう方を「フラッシャー」といいます。フラッシャーの方の多くは、アルコールを摂取した際に発生するアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が生まれつき弱く、そのためアセトアルデヒドに暴露される時間が長く、扁平上皮癌のハイリスクと考えられています。
日本人の約40%の方は生まれつき分解する力が弱く、がんの発症リスクも高いです。その他、食道アカラシアという疾患を抱えている方、熱い飲み物が好きな方、辛い食べ物が好きな方もがんの発症リスクが高くなります。
一方、食道腺癌の原因として挙げられるのは、肥満や喫煙、逆流性食道炎、バレット食道(逆流性食道炎により食道粘膜が慢性的に炎症を起こした後の変化)などです。
飲酒時に顔が
赤くなる方は要注意!?
食道がんの発症リスク因子
食道がんの発症リスクが高くなるアセトアルデヒドは、通常であれば脱水素酵素によって無害な物質へと分解されるため、毒性が強いアセトアルデヒドが体内で発生しても問題はありません。
しかし、「お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる」という「フラッシャー」の方は、アセトアルデヒド脱水素酵素の活性が弱く、毒性の高いアセトアルデヒドが体内に溜まりやすい体質です。
そのため、お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる方、以前はすぐに赤くなっていたが強くなったという方は通常の数倍、食道がんの発症リスクが高いと言われています。日本人の約40%が当てはまると言われているので、お酒を多く飲まれる方やフラッシャーの方は注意が必要です。
食道がんを早期に
発見するための胃カメラ
(胃内視鏡検査)
胃カメラ検査を受けることで、胃だけでなく食道の粘膜も直接観察することができ、食道がんの可能性がある粘膜の異常や潰瘍、狭窄を発見することが可能です。
当院では、全身状態が良好な方には、鎮静剤を用いた苦痛の少ない胃カメラ検査を行うことが可能です。また口からのスコープ挿入は辛いという方には、挿入時の苦痛が少ない経鼻内視鏡検査も可能です。
食道がんの治療
食道がんを早期発見することができれば、内視鏡を使用して切除することが可能です。1週間程度の入院での社会復帰も可能で、患者様の体への負担も少ない治療です。ただし、食道がんが進行してしまうと、治療期間が長く身体への負担が大きい治療が必要になります。
具体的には、手術や化学療法・放射線治療などの治療の中から複数を組み合わせる集学的治療です。がんは初期であれば自覚症状がほとんど無い場合が多く、早期発見のためには定期的な検査が重要です。
特に逆流性食道炎を繰り返している方、アルコールが好きな方、タバコを多く吸っている方(過去、現在を問わず)などは、食道がんのリスクが高くなるため、定期的に検査を受けることをお勧めします。
胃がんの初期症状は何?
げっぷやおならは初期症状?
胃がんは自覚症状が現れにくく、初期の頃はもちろん、進行してからもこれといって症状が出ない方もいます。
そのため、胸やけや胃もたれ、胃・みぞおちの痛み、食欲不振、黒色便、吐き気などといった症状が出ている場合は既に進行している場合が多く、症状が慢性化している方は早めの検査が必要と考えます。
げっぷやおならが気になる
場合は消化器内科を
受診しましょう
げっぷやおならは胃がんの症状ではありませんが、どちらも消化器系の疾患が原因で症状が出ている可能性があります。多発する場合は、呑気症が原因として考えられます。
げっぷの原因として考えられる疾患は、機能性ディスペプシアや逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニアなどです。おならが現れる原因の疾患としては、過敏性腸症候群が考えられます。あくまでも生理現象であるため、大げさに心配する必要はないものの、多発するようならお早めにご相談ください。
胃がんは自覚症状が
出てからだと手遅れ?
胃がんはほとんど症状がなく、症状が出た頃には既にかなり進行している場合が多いです。また、胃がんで現れる症状の多くは、刺激物の取り過ぎや食べ過ぎなどでもみられるものであり、「受診するほどではない」と放置されがちです。胃がんは早期発見・早期治療が重要ですので、無症状あるいは軽症の段階で胃カメラ検査などを受けることが重要です。
胃がんの罹患数は多いが
死亡数は減っている
胃がんは、日本国内で年間約12万人が罹患していると言われるほど罹患数の高い疾患であり、日本人が罹患するがんの中で第3位の疾患です。胃がんも他のがんと同様に、粘膜の細胞が癌化することにより発生します。
胃がんの罹患数は増加傾向にあるものの、死亡率は緩やかに減少しています。死亡率減少の要因としては、定期的に胃カメラ検査を受ける方が増えていること、ピロリ菌の検査・除菌治療を受ける方が増えてきたことなどが挙げられます。
胃がんの
原因になるリスク要因
胃がんのリスクが高い方として考えられるのは、ご家族や近親者に胃がんの既往歴を持っている方(家族歴)、肥満の方、塩分を取り過ぎている方、喫煙の習慣がある方、ピロリ菌に感染している方などです。
家族歴以外の要因は、気をつければ排除できるリスク要因であり、定期的な検査や生活習慣の改善によって胃がんの発症リスクを抑えることが可能です。
胃がんの進行度
胃がんは早期胃がんと進行胃がんに分類されます。胃の粘膜下層までのがんが、早期胃がんと呼ばれています。胃の粘膜下層だけでなく、さらに深くにある筋層にまでがんが達するものが進行がんです。
がんは進行に伴い、周囲のリンパ節や臓器、さらに離れた臓器へ転移します。胃がんでは、リンパ節や横隔膜、肝臓、大腸、膵臓への浸潤だけでなく、血管やリンパ管を経由することによって離れた臓器にも転移(遠隔転移)してしまいます。
胃がんの検査
胃カメラ検査や胃レントゲン検査(バリウム検査)等によって、胃がんの発見が可能です。当院でも行っている胃カメラ検査は、直接カメラで胃の粘膜を観察することができ、胃がんなどの病変を見逃すことなく発見することが可能です。
また、特殊な光や薬剤などを使用することで病変部分をはっきり観察することができ、組織(胃粘膜)を採取して病理組織検査により確定診断を行うことが可能です。より確実な発見のためには、胃カメラ検査を推奨しております。
早期発見のために
定期的な検査を
胃がんは初期の状態では自覚症状がほとんど無いため、確実に早期発見をするには、症状が無くても定期的に検査を受ける必要があります。特に、胃がんの発症リスクが高まる50歳代になったら、定期的に胃カメラ検査を受けることを強く推奨しております。
また、胃がんだけでなく胃がんの発症リスクを高めるピロリ菌に感染している確率も高いため、同時に検査を受けることをお勧めします。30代や40代の方でも、できるだけ胃カメラ検査を定期的に受けるようにしましょう。