生活習慣病

生活習慣病とは?

食事、運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関与し、それらが元々の素因に加えて発症の要因となる疾患の総称で、心血管疾患(心筋梗塞や狭心症など)、脳卒中(脳梗塞、脳出血など)、がんなどの疾患が含まれます。(生活習慣だけでなく、元々なりやすい体質ということも影響していますので、必ずしも生活習慣が悪いと言えない方います。)そのうち、心疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患(C O PD)という疾患は、治療をしないことですぐに命に関わる状態になり得る疾患のため、医療者から言わなくとも患者さん自らが生活習慣を見直すことがほとんどです。
一方、そういった命に関わる重大な疾患の原因となる生活習慣病というのが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などということになります。これらの疾患は、本当にひどい状態になって初めて症状が出ることが多いため、ある程度病気が進行していても気付かずに5年–10年が経過します。

健康診断について

生活習慣病を早期に発見して、重大な病気への進行を予防/抑制する目的で、推奨されるのが健康診断です。1972年以降健康診断で無症状の状態で病気を発見して、重大な病気を予防することが国策として進められ、現在では健康診断が広く浸透してきました。
ただし、健康診断の結果を個人がしっかりと受け止めて、医療機関を受診して早期治療を開始させるというステップが未だ十分ではないことが現在の健康診断の一つの課題と言えます。
そのためには、ただ健康診断を行うだけでなく、治療をしないことによる将来の予測について患者さんに理解してもらい、症状がない中で内服治療を継続する大変さを理解しつつ患者さんの治療意欲を維持することが、生活習慣病を治療する上で大事なことと考えます。

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生活エッセンシャル8とは?

では、具体的に生活習慣病の内服治療以外に、日常生活において大事な要素とは何でしょうか。2022年に米国心臓病学会(A H A)から示された指針において、心血管疾患や脳卒中の予防や進展抑制のために必要な生活のおける要素として、食事、運動、禁煙、良好な睡眠、体重管理、血圧管理、血糖管理、コレステロール管理の8つがあげられています。
医学的な研究の大国であるアメリカで長年蓄積された研究結果から導かれた要因であり、いずれも現代の社会においては一定の理解を得られる要素かと思います。そして、この生活エッセンシャル8こそが、生活習慣病を予防、進行抑制する上での重要な要素と言えます。

生活習慣病の管理、治療について

生活習慣病は、下記に記すとおり、全てが関連し合って動脈硬化を形成していきます。つまり、リスクが重なることで、動脈硬化が雪だるま式に進行していくことになります。具体的には、肥満、高血圧、脂質、糖尿病のリスクが2つ以上で数倍以上、それ以上になると数十倍以上になっていきます。
そのため、生活習慣病の治療は、一つのリスクがある人は、その時点で既に他のリスクを予防するための管理を行う同時進行で行う必要があり、動脈硬化を起こす疾患群として総合的に生活習慣病の捉えることが重要であると考えます。

糖尿病

糖尿病と血管内皮障害
について

糖質は、炭水化物のうち食物繊維を除いたものの総称です。糖質は、主に身体や臓器が動くためのエネルギーとして大きな役割を担っています。糖質は小腸から吸収され、肝臓で分解され、脳や筋肉、赤血球などの組織でエネルギーとして消費されます。余った糖質はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に一部貯蔵されますが、それ以上の糖が体内にあった場合には、血液中に流れたまま状態となります。過剰な糖による活性酸素増産が引き起こされ、活性酸素によって血管内皮の傷害が起きるため、結果として血管がボロボロになる、という状態につながっていきます。全身の臓器は、血管によって繋がり作用していますので、糖尿病による血管内皮障害は、全身の血管に悪影響を及ぼします。
中でも、繊細な細い血管で働いている、神経、網膜、腎臓などは傷害を受けやすく、さらに心臓に血液を流す冠動脈や頭に血液を流す頸動脈/脳動脈、さらに足の血管(下肢動脈)など中等度の太さの血管も最終的には傷つけられていきます。
臓器が生きるために必須の血管を傷害する糖尿病は、様々な病気にとってリスクになることが明らかになっています。最近では、糖尿病の認知度が上がって、その治療の必要性についても一昔前より理解され、以前よりも早い段階で治療を開始することできている患者さんが増えていると思います。糖尿病が原因で透析になる患者さんも減少していることが示され、適切な治療により糖尿病による重篤な合併症が予防できることが示されるともに、現在未治療のまま経過しているような方にも治療が進むことで糖尿病による重篤な合併症をなくすことが期待されます。

糖尿病の内服治療について

糖尿病の治療は、初期の段階は血糖を分解するインスリンという物質の分泌を強化するような薬と、インスリンの作用効率の低下(インスリン抵抗性)を改善する薬などを内服します。
しかし、インスリンの分泌自体が分泌されなくなってしまう状態になると、あとはインスリンを注射で補充してあげる治療しか選択心がありませんでした。
近年、糖尿病の新しい治療薬の開発が目まぐるしく、以前よりもインスリン導入までの治療に選択肢が増えたことや、内服による治療効果が得られるようになったことで、インスリン導入に至る前段階の患者さんを地域の医療機関でしっかりコントロールすることが可能となったと言えます。

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