外傷・皮下異物・アテローム・爪周囲炎・鼠経ヘルニア

外傷
(切り傷、擦り傷、動物咬傷など)

傷の処置は、消毒が大切であると長い間信じられてきました。しかし、消毒は細菌を殺しますが、同時に傷を治す細胞までも殺してしまい、結果的に傷の治りを遅らせてしまうことが分かってきました。
普通の切り傷、擦り傷であれば、まずは傷を水道の水で良く洗うことが大切です。感染のリスクを軽減することができます。ただし、以下のような状態であれば必ず受診してください。

①切り傷・擦り傷

  • 傷口が開いている
  • 出血が止まらない
  • 切った刃物が錆びたり汚れている
  • 傷口に土や泥が入っている
  • 徐々に腫れてきた

②動物咬傷

どんなにかわいい動物でも、口の中は細菌がいっぱいです。咬まれたことで動物が口の中に持っていた細菌が体内に入ってきます。
犬に咬まれた場合、4~20%で感染が起こると言われていますが、猫に咬まれた場合、60~80%という高確率で感染が起こりますので注意が必要です。傷の治療の他に、抗菌薬を投与する必要がありますので早めに受診してください。

皮下異物(トゲなど)

少し深めにトゲが入り、皮下に残ってしまった場合には、化膿して皮下膿瘍を作ってしまうため注意が必要です。ご自身で無理をしてトゲを抜こうとすると深く入ってしまう可能性もあります。トゲが刺さった部位に痛みが続く場合などは早めに受診してください。

アテローム(粉瘤)

多くは背中や項、顔の頬や耳たぶなどにできますが、体中のどこにでもできる良性の皮下腫瘍です。皮膚の下に袋状の組織ができ、垢や皮脂などの老廃物が溜まることによって形成されます。
はじめはほとんど目立つことはなく、ニキビや小さなしこりのように感じますが、増大し細菌などの感染により炎症を引き起こす可能性があり、できるだけ早い処置(手術)が必要になります。手術は局所麻酔下に行います。粉瘤は袋状の組織が残っていれば、時間と共に老廃物が溜まり再発するため、袋状の組織ごと摘出する必要があります。化膿しているときには、すぐには摘出しません。切開して膿を出してから周りの組織の炎症を抑えた後で腫瘍を摘出します。

爪周囲炎(陥入爪)

爪の周囲が傷つくとそこから菌が入り、爪の周囲が赤くはれるなどの炎症を起こします。爪の周囲に痛み、発赤、腫れを認めるようになり、進行すると膿がたまります。
爪周囲炎は、ささくれ、ふかづめ、陥入爪、マニキュア、爪を噛むくせなどが原因となり、菌が進入して発生します。膿がたまっているときは切開して膿を出します。また、爪が食い込んでいるような場合は、食い込んでいる爪の一部を切除します。
爪の下に膿がたまっていれば爪を切除して膿を出す必要があります。処置は局所麻酔下に行います。

鼡径ヘルニア

鼡径ヘルニアとは

鼡径ヘルニアは、足のつけねからお腹の中の小腸や脂肪などの組織が出てくる病気です。
足のつけねの部分を鼡径部といい、腹圧や足の運動に耐えるために、筋肉や筋膜が幾重にも重なった構造となっています。この筋肉の隙間に元々鼡径輪という穴が開いており、お腹の中と外の組織をつなぐ鼡径管というトンネルが貫いています。
この中を、男性では精子を運ぶ精管や精巣に行く血管が通り、女性では子宮を鼡径部に固定する靭帯が通っています。鼡径輪周囲の筋肉が弱くなり、お腹の中の組織が外に出てくることで鼡径ヘルニアが発症します。

鼡径ヘルニアの治療

治療は手術にて、鼡径輪を人工の膜で塞ぎます。通常は全身麻酔下にて腹腔鏡で手術を行います。(当院ではヘルニアの手術は行っておりません。診察にて鼡径ヘルニアと診断し、連携病院に責任をもって紹介します。)

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